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ふるさと納税メモおよびその経済効果について

ふるさと納税 簡易メモ

ふるさと納税(正式名称:地方創生応援税制)は2009年に出来た制度で、現状での主な利用者は30~40代が中心。

彼らの年収をざっくり700万円程度と見積もって話すと、税控除(所得・住民税)可能な総額、つまりお得に制度を利用して寄付できる総額は10万円/1年であり(以下に紹介するサイトで簡単にシミュレーション可能)、その3割にあたる3万円程度の返礼品を実質2,000円で得ることができる、というもの。

 

※ただし、確定申告、あるいはワンストップ特例申請(寄付自治体5個以下までなら返礼品とセットで送られてくる申請書にマイナンバーカードの写しをいれて送り返す)が寄付した翌年明け早々までに必要。

 

ふるさと納税を利用するメジャーなサイトはふるさとチョイスが有名で、友人に勧められて今年から始めてみた。

www.furusato-tax.jp

 

■私の2020年度寄付内容

2020年度は単三、単四の充電池、トイレットペーパーや洗剤などの消耗品を選んだ。

例)充電池

【1404】ニッケル水素充電池Pool-プールー(単3)+充電器セット - 岐阜県笠松町 | ふるさと納税 [ふるさとチョイス]

 

【1304】ニッケル水素充電池Pool-プールー(単4)+充電器セット - 岐阜県笠松町 | ふるさと納税 [ふるさとチョイス]

 

ふるさと納税における国のメリットとは?

上記サイトに概要が書かれてあり、国にとってのメリットとして税収UP、と小さく記載されているが、本制度では税金の流入先が国民の住居先(例:東京)から、寄付先(例:広島)に変わるだけ。

税収の総和そのものが増える、という訳ではなく、税収UPのメリットが良く分からなかったので、国のメリットとその経済効果について自分なりに整理してみた。

f:id:mind_tech:20201113125105p:plain本制度により、国の税収UPが実現されるとすれば、それは恐らく寄付額(≒税収)の総和に対する確定申告orワンストップ特例制度での控除申請漏れ分と考えられる。

 

ふるさと納税の寄付額に対し、返礼品の相当額は約3割であるため、ふるさと納税利用者が税制控除の申告を忘れてしまった際に、寄付額の7割がそのまま地方自治体の財源となる。ただし、本記事の末尾に述べる通り、ざっと見積もった結果、この効果はせいぜい数十億円程度(導出根拠は後述)。

 

ふるさと納税の真価は税収UPというよりは、"適切"な税収分散による東京1極集中回避と思われる。

 

■東京1極集中のメリットおよびリスクについて

まず、東京1極集中については賛否両論説があるため、1極集中回避がなぜ国にとってメリットがあるかについて以下に述べる。

 

メガトレンドの一つとして、経済合理性を追求した過度な都市化があり、今現在でもインドのバンガロールや中国の深圳といった都市が着目を浴びているように、都市vs都市での経済や人材獲得戦争が既に主流となっている。f:id:mind_tech:20201113220614p:plainこのような中で、高齢者大国である日本が優秀な人材を獲得し続けていくには東京の現レベルの維持、つまりメガシティの維持は必須である。

 

東京1極集中の流れは経済合理性にかなっており、簡単に止まるものでもないし、上述のグローバル競争の観点からも止まってしまうと困るものでもあるが、東京1極集中にはリスクが存在する。

 

「Don't put all your eggs in one basket(すべての卵を一つのカゴに盛るな)」

投資の世界の格言で、全投資資金を1銘柄に注ぎ込むのはリスクが大きすぎるという意味で、これは国民分配にも当てはまる。

国民を東京に集中配置するリスクとしては気候変動や地震などが挙げられる。

f:id:mind_tech:20201113221614j:plain また、東京1極集中による高い地価、都心への通勤混雑、競争の激化は少子化を加速させる方向に進むことから、適度に選択と集中を行う必要がある。

ふるさと納税は国民にとってニーズのある成果物を産出できる地方を”選択”できることから、この制度により地域間競争による自然淘汰が起き、選択と集中が可能となる。 

 

ふるさと納税における税収UPの影響度検討

ここで、冒頭に述べたふるさと納税のメリットとして挙げられている国の税収UPが果たしてどの程度の影響度か気になったので利用者数を調べてみた。

 

 2013年~2017年の5年間のデータでは利用者推移が好調に伸びており、この推移だけ見ているとふるさと納税による寄付額(申告漏れによる税収UP)は可能性を秘めているように感じる。

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ただし、この勢いは全く持って続かない。

 

直近5年間のデータを多項近似した曲線を用いて2030年(今から10年後)の利用者数を調べてみると、日本国民の3割がふるさと納税を利用する、という非現実的予測となる。

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  ざっくり10年後、身の回りの知り合い20人のうち1人がふるさと納税を実施している(2017年時点のデータでは53人のうちの1人が利用)と仮定するのが受け入れやすい伸び率であり、中期的なレンジでみると大した利用者数の増加は見込めないように思える。

(※10年レベルの中期的レンジでみれば、実データの線形近似ですら過大方向の見積もりになるのがなんとなく分かる)

 

ふるさと納税による寄付額の遷移は以下の通りで2017年の総額は約3653億円。

 

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上述の仮定により2030年は寄付者が2.5倍に伸びてくれれば、ある程度の桁数さえ合っていればいいとして乱暴に計算して3653億×2.5の約9132億円と、

ほぼ1兆円の規模となる。

このうち、3割の返礼品相当額を差っ引いた約7割が税収に相当し、その税金控除申請漏れの対象を仮に1%とすると9132×0.7×0.01=64億円の税収UPとなる(皮算用)。

 

日本の国家予算は例年ざっくり約100兆円/年であり、国債を除いた税収は約6割。

令和2年の歳入歳出の内訳は国税庁の資料によると以下の通り。

 

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国家予算だとさすがに比較する規模が大きすぎるため、もっと細かく見てみる。

ふるさと納税による税収は所得税(国)および住民税(地方)に分類されるため、

地方の税収まで見てみるとより影響度が図りやすい。

参考に税の分類を以下に掲載する(出典)

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地方の歳入(都道府県、市町村)を以下に示す。 

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ふるさと納税の真価について

以上より、申告漏れによる税収増額64億という数字(上述)では税収UPのメリットはほぼないように思われる。

ふるさと納税による国のメリットは税収UPではなく、少子高齢化の進む日本の国力衰退カーブを緩やかにするための”適切な税収分配”の方が本命と思われる。 

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